2005年
劇団かみ〜ず「犬夜叉」
オリジナル・サウンド・トラック1
"INUYASHA"
Kamise Theatre Troupe's Original Sound Track
歌詞
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 時は戦国時代。現代から迷い込んだ一人の少女が四魂の玉をめぐる動乱に巻き込まれる。さまざまな野望が渦巻く中、少女は人々に希望を与え、そして、未来を作った。大切な人と共に・・・ 
(文:大樹克行)
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楽譜
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1 どこだ!  劇の第1曲目。最初は「おすわりソング」のメロディにする予定だったが「鬼ごっこしてるみたい」ということでこういう形に路線変更。この焦燥感はThe Policeの「Synchronicity」の影響。展開部はギタリストJoe Satrianiの影響? それにしても「これでもか」という程のこのシンコペーション(わざとタイミングずらして裏拍で歌うところ)、ちっちゃい子たちにはキツかったかな?
 バックコーラスの声が少年少女合唱団さながらで、昔のアニソンぽくてGOOD。
2 虚構の夢  「犬夜叉復活」のメロディを使い、伴奏だけ変えてます。「動物の謝肉祭」だか「くるみ割り人形」に、こんな感じの伴奏なかったっけ? 演出さんから「犬夜叉の旋律には不安定な不協和音的響きが欲しい」との注文があったので、dimのコードを使ってみたらこうなった「♪明日へのとびら〜」の「ら〜」の部分と、「♪四魂の玉に」って歌ってるところがdimね。
3 ふたりの運命 ピアノ
フルート
 劇の核となる曲で、わりと早い段階に仕上がったのだが、核となるだけに歌詞でモメた。かごめが犬夜叉に「人間になろう」と誘いかける必要性について、劇全体のプロットと絡め壮大な議論に発展したっけ…。曲は久石譲の作品や「男はつらいよ」みたいな、郷愁を誘う懐かし〜い感じに仕上げました。
4 犬夜叉封印  緊迫感を出したつもりだけど、今聞いてみるとイギリスのスパイ映画(ずばり007)だね。このスネアのリズムは何だろう。あ、思い出した!久石譲の「アリオン」だ!
5 時のはざま ピアノ
管楽器
 劇のテーマとも言うべき曲。「金曜ロードショー」のテーマではありません。この曲は劇の冒頭で流したいと思って書いたけど、演出さんの言う通りここで使って効果抜群だったね。
6 歴史の中へ  劇全体を通して時代設定が「現代」になっているのはこの歌だけ。だから「現代」っぽさを出すため9thのコードを付点8分の伴奏に乗せてみた。サビの部分のコードはほぼ9th。そして「小学校」っぽさを出すため、ソプラノリコーダーやカスタネットやマリンバ(木琴)を使ってみた。でも後で聞いたら、かごめって中学生って設定なんだって?
7 タイムスリップ
 タイムスリップって、どんな音? そこから出発したので、BGMというよりは効果音的な曲。予備拍が長い上に、アドリブの女王結羅様が魔法をかけるタイミングが毎回違うから、合わせるのはヒヤヒヤものだったさ。ピッコロであの一番高い音を出すのは大変だったようです…
8 奈落のテーマ  「奈落様、テーマ曲はどんなのがいい?」「う〜んとねぇ、邪悪なポップ」…その結果がこれです。劇中では初めて踊りの入る曲。「♪なのだ〜」の連発は、私の作詞センスのなさが故。でも奈落様はカッコよかったのだ〜♪
9 奈落のテーマ
reprise
 創作劇「にじのむこうへ」のために作った「召使いの歌」の伴奏に、メロディを少し変えてリメイクしたもの。ティンパニの使い方はブラームスの「交響曲第1番」のようであり、実は三枝茂彰の「ZG」だったりする。
10 妖怪が出た!  出ました!これまた「あさひやま」的なBGM。妖怪に限らず、妖しい人が登場するときに使えます。(「どこでも忍者」とかね・・・)
11 追跡  奈落のテーマと桔梗のテーマをくっつけて出来た曲。そうか!場面転換で困ったときは、くっつければいいんだ!ってね。
12 犬夜叉復活  「時のはざま」「ふたりの運命」と同じく初期に書き上げた曲で、犬夜叉君のテーマ曲。初めは劇を通してドラムを一切使用しないつもりだったので、ピアノ一本でもスピード感を出せるよう伴奏に付点8分音符を多用してます。でもやっぱりドラムのキックが繰り出すビート感には、かなわないね〜。
 気が付いた人はいないと思うけど、最後の「♪い〜ぬ〜や〜しゃ〜」の旋律はそのまま「♪ラ〜イオ〜ンズ!(松崎茂)」とも歌える。所沢出身なもんで・・・。
13 犬夜叉復活
reprise
 子ども達と一緒にDVD見てて、全編通して一番ウケてたのがこのシーン。話術よりも、子どもはこういうの喜ぶんだね。
14 砕け散る玉  「行け!アクシズ!いまわしい記憶と共に!」な感じ。
15 おすわりソング  元々、劇の冒頭で使うために作った曲。初期の曲名も「どこだ!」でした。「♪い〜まだ、今だ」の代わりに「♪ど〜こだ、どこだ、犬夜叉はどこだ」って具合に。でもボツになったので、こちらで再利用。
 「犬夜叉」作曲の依頼を受けたとき、演出さんや監督さんから、「和風に」とか「和太鼓アンサンブルで」とか「篳篥や篠笛も使って」なんて言われたもんだから、しばらく頭の中「盆踊り」漬けだったね。そんなこんなで、こういう作風に仕上がりました。でも本番ではもじもじ君の彼、本当に篠笛使ってたね。さすがです!
 それにしても、楓とかごめの後ろで踊ってる村人達、最高にかわいかったな〜。
16 犬夜叉の想い  本番はこの曲、ピアノとチェロでやってました。サントラの方は、私の楽曲データに演出さんが音を付けたバージョンです。練習はずっとこっちのバージョンでやってたので、子ども達には親しみがあるかなと思ってこれを採用しました。
 次の曲の頭ですぐギターを弾くので、持ち替えが大変だったなぁ。本当はチェロもギターも何人かに声を掛けたんだけど、断られてしまったものだから「仕方なく」自分でやってるんですよ〜。でもそれが「かみ〜ずばんど」の姿勢でもあるんです。「楽器」が欲しいから人を集めるのではなく、集まった人たちで「さあどうしよう」ってね。実際、クラリネット奏者にカバサに初挑戦してもらったり、チューバ吹きにグロッケン弾いてもらったり、バイオリンが一人しかいないのに2ndバイオリンだったり…(あ、それは関係ないか…)。
17 貢ぎ物  「朔の宵」同様、日本語の持つ抑揚に気を付けながらメロディーをあてていった曲。「女の子」「桔梗様の」「ねぇ、すごいでしょ」なんて辺りがそうかな。当時の私には、歌詞は「詩的」でなければならないという固定観念があったので、日常会話文を歌にするにはどうしたら良いか悩んだ結果がこれ。「日常会話文だって充分詩的だ」ってツッコミはなしね。
18 七宝のダンス  これは何の曲を参考にしてるのかな…。多分「オモチャのチャチャチャ」辺りかな?演出さんがどういう振り付けをするかな〜と楽しみにしてたら、やっぱり「チャチャチャ」のところでお尻フリフリだったね!
 どこかの小学校の運動会では、1年生が「チェッ・チェッ・コリ」の代わりにこの曲で「玉入れ」をやったそうな…。「チャチャチャ」のところでは、やっぱりお尻をフリフリしたそうな…。

 
あのキツネ妖怪七宝ちゃんも、次回作では主役のハリーを演じます!
19 犬夜叉バトル  うわっ!改めて聴くと、冒頭もろ「イースII」だ! 
 演技に音楽を合わせるのではなく、音楽に演技を合わせて舞台を作り上げるというのが演出さんのスタイル。だから私が「これでどーだ!」って投げかけた曲を、彼は自分のイメージとすり合わせ、うまくハマるようなら「OK!」、ハマらないようなら「ダメっ!」。そのやり取りが結構スリリング。だから、振り付けをイメージしやすいよう、起伏に富んだ仕上がりを心がけて作った曲。
20 約束 スコア  はい、どうしてもチェロ弾きたかったんです。でもやってみて大失敗。やっぱり本番中、指揮者はあまり欲張らず、黙って棒振りに専念するのがいいのかもね…。
21 四魂のかけら  「聖飢魔Uっぽい曲を」との注文だったので、レンタルショップでCD借りてくるところから始めたさ。聴いてみて納得。なるほど確かに妖怪っぽい、いわゆる「ガイコツ系ヘビメタ」ね。でもあの雰囲気はディストーションの効いたギターがないとなかなか出せないなぁ。イントロだけはギターの早弾きをイメージしたので、フルートとクラリネットがとばっちりを受けるハメに…。
 で、完成してみたら結局、中島みゆきだったりして。
22 朔の宵 ピアノ

フルート
@劇の最後で使う「かごめの道」と関連づける。
A恋愛感情を含ませたいので、歌詞に「織り姫と彦星」を入れる。
B「月が出てない」ということを歌詞に盛り込み、犬夜叉が「お籠もり」をするきっかけにする。
 という演出さんからの3つの注文を受けて監督さんが作った詞に、私がちょこっと手を加えて歌詞が完成。あとは歌詞が持っている抑揚をなるべく損なわないように旋律を付けていって曲が完成。コード進行は「かごめの道」の後半と同じにしたので、バックで「♪さ〜よ〜なら〜、さよ〜なら」って歌えるって知ってたかな?
 このシーンでは、照明さんが体育館の天井に満天の星を映し出すという話だったので、その効果をより一層引き立てるため、伴奏はピアノ一本に絞って勝負。ピアノ伴奏のみ(ガイドメロディはあるが)で歌ってるのは劇を通してこの曲だけ。そうすることで、より印象に残りやすくしたつもり。ただ演奏者の都合を考えずに響きだけを追求して音符を並べたので、この曲が一番弾きにくかったそうな。でもそこはさすが、ピアニストの意地。本番、完璧!

 「♪今夜〜だけは〜」ってとこ、河島英五の「時代遅れ」入ってるねぇ。
23 妖怪バージョンup  ひたすら「007」と「アリオン」。
24 妖怪退治屋さん  曲調は映画「イルポスティーノ」の「Loved by women」の影響。あの映画は良いです。内容も純朴で好きですが、何よりも音楽が牧歌的(?)で大好きですね。
 正直、「犬夜叉」はアニメも漫画も知らないので、「妖怪退治屋」がどういう存在なのか、全く想像がつかなかったんです。でも練習に初めて顔出したとき、珊瑚と琥珀のあの性格と歌唱力を目の当たりにして「これだ!」とヒット。少し茶目っ気のあるのびのびとした旋律が浮かびました。二人で交互に歌ってもらうつもりだったから、息継ぎの間が全くないメロディにしたんだけど、ふたを開けてみたら二人一緒に歌ってるじゃん! 踊りながらあれを歌うのは、いい訓練になったんじゃないかな〜。(他人ごと)
 この曲、きっと演出さんのイメージと180度方向が違ってたと思うんだ。それでも「OK!」を出す彼の柔軟性と開拓精神には脱帽。
 歌詞の「♪別料金!」というネタは、「ヨーデル食べ放題」から頂きました。あ、バレてた?
25 弥勒のテーマ  「犬夜叉サントラ1」の中で、唯一ごn以外の人が書いた曲。ご存じピカさんの名曲。
 この曲を演奏するに当たって、バンドのメンバーが「ステージを乗っ取る」と大いに張り切り、本番直前まで踊りの練習。子ども達とバンドと、どちらがよりお客さんを惹きつけられるかの真剣勝負。レセプションで「もじもじ君」もこの曲に合わせて登場。もはやこの曲なくして、かみ〜ず「犬夜叉」の歴史は語れません。
 私も何十曲と書いたけど、結局この1曲に全部持って行かれたなぁ…。
26 どうなる? 「時のはざま」のテーマを使ってほしい、との注文に応じて作った曲。珊瑚が弥勒に追いかけられるところから始まります。
27 第二幕序曲  どういう曲にしようか悩んでいたところ、演出さんから「第2幕の序曲だから、1幕の最後の曲と2幕の最初の曲をつなげれば」とヒントをもらい、作業に取りかかりました。でも、ひとえに「つなげる」と言っても、全く性質の異なる2つの曲をスムーズにつなげるなんて、そう簡単には行かない。しかもこの曲の最後で桔梗が奈落に襲われることになるので、劇的な終わり方にしないといけない。この「つなぎ」と「劇的な終末」の2つのことがあり、技術的に一番苦労した曲でした。
 桔梗と奈落の迫真の演技、思い出すだけで鳥肌。
28 四魂の玉 四魂の玉にはどんな力が秘められているのかを歌った曲。歌うのが珊瑚と琥珀だから、ちょっとくらい難しくしてみましたが、二人はしっかり応えてくれましたね。
29 弥勒の秘密  「犬夜叉」の原作を知らない私にとって、かみ〜ずの脚本だけで弥勒の人物像を読み取るのは難しかった。だから、先行してピカさんが作ってくれた「風穴」(同じ場面のための曲)は、いい刺激になった。
 出だしはちょっと「聖闘士星矢」?空耳?
30 鬼がま  このメロディーはエストニア民謡「Halb Sirp」(読めない!)にインスパイアされてます。伴奏については演出さんの注文を受け、彼が納得するまで何度か書き直しました。そのこともあって、音楽面での演出効果としてはこの曲がベストなのではないでしょうか。
 ピアノで2カ所、「クラスター」っていう特殊奏法を使ってます。「♪お〜まえの魂頂くぞ!ジャーン!」と、最後の「いやーっ!ジャーン!」の「ジャーン!」がクラスター。大学受験の際、ソルフェージュの先生に「これを聴音してみて」と言われてあっけにとられたのが忘れられなくてね。でも記譜法が分からなかったので、適当な音符を縦に並べといて、あとはピアニストに直接「こうやって」と説明したっけ。
31 黄泉がえる魂  打楽器奏者はえらいよ。なにせマリンバからスレイベル、ティンパニからビブラスラップまで、これ全部打楽器だからね。自分が触れたことのないような楽器であっても「打楽器奏者」であるがために任されてしまう。でも、初めて触れる楽器だったら誰がやっても同じかと言えばそうではない。やっぱりあなたたち打楽器奏者じゃないと、ダメなんです。
 それにしても、あのスレイベルさばきには驚いた。鈴の中を一時無重力状態にする(自由落下させる)ことでサステイン効果を出すなんて…。
 次回はどんな特殊楽器使おうかなぁ。
32 桔梗復活 あの世から復活した桔梗が奈落達に焚き付けられ、打倒犬夜叉「奈落のテーマ」を歌ってしまいます。その意味でこの作品の鍵となる曲。でも、あまりに私の仕事が遅いので、監督が先にデモを作ってしまったときは焦りましたね。監督のバージョンは、サントラ2でご紹介予定。
33 捜索  はい、その通りです。この曲の制作に取りかかる直前まで「ナウシカ」観てました…。
34 恨みの桔梗  犬夜叉サントラ受け渡し日の直前に、この曲をレコーディングするの忘れてたことに気づき、慌てて機材持って桔梗様の家に録音しに行ったさ。そしたら懐かしのムスカ様にも会えたさ。
 ピアノはすっかり「トワイライト・ゾーン」、ファゴットの旋律はどっぷり「ロード・オブ・ザ・リング」。その他、巫女桔梗のシンボルとも言うべきスレイベル(シャーンって音)と、屈折した魂を表すギロ(ギュイッ!って音)を使い、「巫女の桔梗が屈折した魂をもって復活したんだぞ〜」って表現してるつもり。
35 憎みあう二人  これは犬夜叉と桔梗が戦う場面のBGM。戦いの激しさというよりは、戦わざるを得ない二人の運命の方ににスポットを当てて書いたらこうなりました。
36 かごめの声  「わたしはかごめ」と、かごめの魂が桔梗に訴えかけるシーン。桔梗のテーマである「時のはざま」の旋律を使い、桔梗の葛藤を表現してみました。
 オカリナで演奏された唯一の曲。ブラボー!
37 かごめを救いに 「犬夜叉」のテーマと「恨みの桔梗」のテーマをつなげることで、音楽で場面転換を表現してみました。
38 最後の戦い 桔梗とかごめの対話。セリフを入れられなかったのが惜しい! スローモーションの演出がカッコ良かった。
39 桔梗昇華 桔梗とかごめの魂が入れ替わるシーン。手を合わせて回転するところが印象的。
40 輪廻  「時のはざま」の歌&ドラム入りバージョン。「♪魂は引かれ合い」のところの旋律は、ホルストの「惑星(木星)」に始まり、「ロード・オブ・ザ・リング」や久石譲の「Asian Dream Song」などでも多用されてるくらいメジャーなもの。その他、構成や楽器の使い方などはTajaの曲「時空のたもと」にかなりインスパイアされました。
41 決意 「輪廻」の調と「かごめの道」の調とのバランスを整えるために、この曲をイ長調にしたのを覚えている。でもこの曲、なしでも良かったかなと、今になって思う。
42 かごめの道
ピアノ  劇の最後の曲は「ふたりの運命」と同じメロディでいくつもりでした。しかし、それでは演出さんが首を縦に振らず。「伴奏は『ふたりの運命』をそのまま使い、メロディだけ変えてほしい」という彼の注文に応えた結果できあがったのがこの「かごめの道」。フィナーレにふさわしい曲に仕上がりました。
 この曲、今でもお別れの季節になると歌詞だけ変えて職場で歌ったりしてます…。
43 カーテンコール 「犬夜叉」のテーマをベースにしたカーテンコール。後半からは「U−W−T−X」のコード進行。勝手に「サヨナラ進行」と名付けてます。名残惜しくいつまでも繰り返すことができるから。